■ 迷っている、と思っていた
迷っているのだと思っていた。
自分はまだ考えている途中で、
慎重で、臆病で、決めきれないだけなのだと。
でも、ある日ふと気づいた。
それは「迷い」ですらなかった。
■ 選んでいないという選択
選択肢を並べて、比べて、
悩んでいるふりをしていただけだった。
比較することで満足し、
判断をした気になっていた。
判断できなかったんじゃない。
判断しないという選択を、
静かに続けていただけだった。
■ リモコンを握ったまま
暗い部屋で一人、
テレビの前に座り、リモコンを握ったまま。

チャンネルは変えていないのに、
「今は決める時じゃない」と
自分に言い聞かせていた。
考えている間は、
止まっていても許される気がした。
何も始めていない自分は、
まだ失敗していないと思えたから。
■ 何も選ばなかった日の正体
でも現実は、静かに進んでいた。
何も選ばなかった日は、
昨日の続きを、そのまま再生しただけだった。
止まっているつもりでも、
盤上の時間だけは進んでいる。
選ばなかったことに名前をつけた瞬間、
それは初めて
「自分の選択」になった。
■ 残り一手は、まだある
逃げていたのは未来じゃない。
決めてしまったあとの自分だった。
気づいたとき、
ほんの少しだけ楽になった。
迷っているわけじゃなかったのなら、
次は「選ぶかどうか」を選べばいい。
それすら選ばないままでも、
時間だけは進んでいく。
残り一手は、
まだ盤上にある。
ただ――
指さないままでも、
ゲームは続いている。

