1|値引きの瞬間
仕事帰り、閉店が近い店内で
値引きシールが貼られる瞬間に立ち会った。
赤や黄色のシールが貼られた途端、
さっきまで通り過ぎていた商品が、急に「選択肢」に変わる。
値段が下がっただけなのに、
世界の見え方が少し変わる。
まるで、モノクロが一瞬だけカラーになるように。
2|欲しさの正体
本当に欲しかったのだろうか。
それとも、
「今しかない」
「もうすぐなくなる」
その空気に、背中を押されただけなのか。
必要性よりも、
逃したくない気持ちのほうが先に立つ。
目の前で一つ、また一つと
売り場から賑わいが消えていく。
「失いたくない」という本能が、静かに加速する。
気づけば、手に取っていた。
3|冷静という錯覚
けれど、持ち上げた瞬間に冷静になる。
家に帰れば、
すぐ食べて終わるかもしれない。
満足は一瞬で、
残るのは空の容器だけかもしれない。
それでも、売り場を離れると不安になる。
「今ごろ、誰かが買っているかもしれない」
欲しかったかどうかよりも、
“手に入れなかった事実”のほうが気になり始める。
あの行方が、
頭の中を何周もしていた。

4|ロボの幻聴
──目を閉じる。
すると突然、
「ビクトリー!夢を届けタイヤ!!」
と、聞こえた気がした。
ああ。
これはあのときと同じだ。
DXブンブンジャーロボチャンピオンを
目の前にしたときの、あの感覚。
5|順番は、もう分からない
安くなったから欲しくなったのか。
欲しかったから、安さが後押しになったのか。
順番は、もう分からない。
結局その日は買わなかった。
けれど、
正解だったとは、言い切れない。
……てか、
優勝バクアゲ合体って、なんやねん。


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