1|終わったはずの選択肢
発売日は逃していた。
気づいた頃にはどの店も売り切れで、
もう縁がなかったものとして、頭の中から外していた。
それが三週間後、
たまたま立ち寄った別の店で見つかった。
S.H.Figuarts 真骨頂製法の仮面ライダー2号が、
ガラスケースの中に何事もなかったように立っていた。
一瞬、現実感がなかった。
終わったはずの選択肢が、
突然、目の前に戻ってきたような感覚だった。
2|1万円の重み
正直、1万円は高いと思った。
冷静に考えれば、
家に帰ってから毎日触るわけでもない。
きっと、しばらくしたら
棚の一角で静かに立つ存在になる。
それでも。
その場を離れて帰る自分を想像すると、
あとから「あれは正しかったのか」と考え続ける姿のほうが、
はっきり浮かんだ。
迷いが終わらない未来より、
一度、終わらせる未来を選びたかった。
だから、その日は買った。
3|開封の瞬間
満足感と、少し遅れてやってくるワクワクで胸が満たされていた。
化粧箱を持ち上げると、
まるで宝箱を開ける前のような感動があった。
やっぱり作りは群を抜いていた。
関節のライン。
立ち姿。
まるでスーツアクターがそのまま憑依しているかのようで、
時間を忘れて、ただ眺めていた。
気づけば、
あの特徴的なポーズを取らせていた。
4|視界に入る1万円
今は机の上で、堂々と立っている。

視線を引くのは、
黒い体の中で、はっきりと浮かぶ赤。
グローブとブーツ。
派手な色じゃないのに、
そこにあるだけで全体が締まる。
家に帰り、視界に入るたびに、
あの1万円が脳裏をよぎる。
それでも、不思議と後悔はない。
むしろ、
「あのとき買った」という事実が、
今の自分を少しだけ強くしている気さえする。
5|迷いは、本当に終わったのか
買った瞬間、
迷いは終わった。
そう思っていた。
けれど、
終わったのは「買うかどうか」の迷いだけで、
「この選択は正しかったのか」という問いは、
静かに形を変えて残っている。
それでもいい。
あの夜、
自分で決めた。
迷いが消えたわけじゃない。
ただ、
迷いの場所が変わっただけだ。


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