理想のあとで

終盤|振り返り

大人になれば、迷わなくなると思っていた

判断できないまま、気づけばここまで来てしまった。

校庭を駆け回っていたあの頃、
大人になれば、もっと簡単に決められると思っていた。

欲しいか、いらないか。
やるか、やらないか。

経験を重ねれば、
選択は自然と洗練されていくものだと、
どこかで信じていた。


自由と引き換えに増えたもの

世間では「大人」と呼ばれる年齢を迎えた今、
現実は、少し違っていた。

自由を手に入れた代わりに、
選択肢は増えた。

同時に、
失敗の想像も増えた。

決める前に考える時間だけが、
やけに長くなった。

「正解を選びたい」と思うほど、
一歩目は遠ざかっていく。


得るたびに、何かを失う

足を手に入れた人魚姫の話を、
ふと思い出すことがある。

何かを得るたびに、
代わりに失っているものがある気がする。

選べるようになったはずなのに、
かえって身動きが取りづらくなった。

ロボの前で立ち止まった夜も、
値引きシールの前で迷った時間も、
迷い方はいつも同じだった。

対象は違っても、
立ち止まる場所は変わっていない。


慎重なのか、怖いだけなのか

決めきれないのは、慎重だからなのか。
それとも、間違えることを恐れているだけなのか。

判断を先送りにするたび、
「選ばなかった自分」だけが静かに増えていく。

年齢を重ねるにつれ、
何かが少しずつ濁っていくように感じることがある。

判断できないまま大人になったのか。
大人になったから、判断できなくなったのか。

答えは出ていない。


残り一手の手前で

ただ、いつも最後の一手の手前で、
一度立ち止まってしまう自分がいる。

肝心な「残り一手」を決めきらないことを、
大人の余裕と呼ぶこともできるのかもしれない。

けれど本当は、
余裕なんかじゃなくて、

ただ少しだけ、
失うのが怖いだけなのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました