割引の時間
閉店間際の7時か8時ごろ、
疲れた体でスーパーに入ると、割引シールが貼られた惣菜が目に入った。
普段なら選ばないはずなのに、
「今日はこれでもいいかもしれない」と一瞬思ってしまう。
カリッと揚がった唐揚げ。
宝石のように赤い鉄火巻き。
どれも、持って帰ってほしそうにこちらを見ている。
忙しい平日の夜、この光景に気を取られない人は少ないだろう。
二つ買ってもお釣りが返ってくる、この小さな幸福。
きっと、この時間帯のスーパーでしか味わえない感覚だ。
カゴの重さ
あれもこれも手に取り、
籠をいっぱいにしてレジへ向かおうとしたとき、ふと立ち止まった。
買ったとしても、
家に帰ってすぐ食べるだけで、特別な満足感があるとは思えなかった。
むしろ、
食べきれなかったり、
あとから後悔する可能性の方が、先に浮かぶ。
ーー果たして、この量の惣菜を一日で食べ切れるのか。

売り場を離れて
惣菜コーナーを後にし、出口へ向かう途中、
また一つ、また一つと惣菜がレジで買われていくのが見えた。
売り場を離れたあとも、
「もう誰かに取られているかもしれない」という気持ちが頭から離れない。
本当に必要だったのかどうか、
判断は揺れたままだ。
囁き
「今日も頑張ったんだから、ちょっとくらい贅沢してもいいよね」
耳元で、そんな声が囁かれているような気がした。
こういう感覚は、これまでにも何度かあった。
値引きされたものを見ると、
欲しいかどうかよりも、
「逃したら損をする気がする」という感情が先に立つ。
目の前で一つずつ減っていく光景を見ていると、
この手で掴み取りたいという気持ちは、さらに強くなる。
残った問い
あれは本当に、お腹が空いていたからなのか。
それとも、
安くなったものを逃したくなかっただけなのか。
結局その日は買わなかったが。
ただ、
判断を終えたあとも、
その問いだけが静かに残っている。


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