音のない世界

終盤|振り返り

止まった時間の感触

選ばなかった日が続くと、
時間は静かに積もっていく。

何も失っていないはずなのに、
何かを置いてきた感覚だけが残る。

今日もまた、
迷いながら帰り道を歩いていた。

やるか、やらないか。
送るか、送らないか。
買うか、買わないか。


決めないという安全地帯

これまでの自分なら、
「もう少し考えよう」と
そのまま持ち帰っていたはずだ。

考えることは安全だ。

決めなければ、間違えない。

でも今日は、
ほんの少しだけ違った。


静かに打った一手

正解かどうかは分からないまま、
小さく、ひとつだけ決めてみた。

大げさな一手じゃない。
盤面をひっくり返すような決断でもない。

ただ、先送りにしなかった。

その瞬間、
未来が変わったわけじゃない。

それでも、
胸の奥のざわつきは、
少しだけ静かになった。


選ぶということ

選ぶというのは、
未来を当てることじゃない。

止まっていた時間を、
少しだけ動かすこと。

たとえ小さくても、
一手を打てば盤は進む。

完璧じゃなくていい。
間違えるかもしれない。

それでも、
選ばない夜より、
選んだ夜のほうが、
少しだけ眠りが深い気がした。

残り一手は、
いつも派手じゃなくていい。

静かに打たれた一手が、
あとになって意味を持つこともあるのだから。

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