完成という異常

終盤|振り返り

ガチャを回す前、

自分が何を求めていたのかは、正直よく分からなかった。

欲しかったのは中身だったのか、

それとも「今なら全部揃えられる」という状況そのものだったのか。

区別がつかないまま、

手は自然と硬貨を入れていた。

1月下旬に発売された

「POWER KNUCKLE by TOUMA × KAMEN RIDER」。

1回1000円、全4種類。

かなりの人気商品で、

店舗に行ってもマシンの中が空っぽ、ということも珍しくない。

車を走らせ、

ようやく見つけたそのマシンの前で立ち止まった。

中身を確認したあと、

気づけば、ぼくの手には500円玉が握られていた。

もう、コインを入れる直前だった。

ハンドルを回している間の記憶は、ほとんどない。

最後の一つが出た瞬間、

胸の奥に、小さな区切りがついた。

スッと肩の力が抜けた。

嬉しかったのは確かだし、後悔もしていない。

ただ、その感情が達成感なのか、

それとも「もう考えなくていい」という安堵なのかは、

少し時間が経たないと分からなかった。

もし一つだけ出なかったとしたら、

数日経った今も、このガチャのことを考えていただろうか。

探し続ける理由を持ったまま、

もう少し長く、この衝動と付き合っていたのかもしれない。

揃わなかった未来の方が、

もしかしたら、物語は続いていた。

分岐点からは、かなり遠ざかっていたはずだ。

全部揃ったはずなのに、

次にやりたいことが浮かばなかった。

欲望は満たされたはずなのに、

衝動だけが、急に静かになった。

目的地に辿り着いたその先には、

いったい何が見えているのだろうか。

満足は、何かを与えると同時に、

何かを奪っていくものなのかもしれない。

この選択を、誤りだったとは思っていない。

でも、正しかったとも言い切れない。

無意味だったと切り捨てる気にはなれなかった。

揃ってしまったことで失ったものに名前をつけるなら、

それは「次の一手」だったのかもしれない。

それでもこの満足を、

少なくとも、

あの夜の自分は納得している。

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