改めまして、
「残り一手」です。
何かを決める場所ではありません。
決めきれなかった瞬間が、
そのまま残ってしまう場所です。
正解でも失敗でもない。
ただ、判断が途中で止まったままの時間だけが、
静かに置かれています。
――これは、誰の声ですか。
そう聞かれることがあります。
けれど、この文章を書いている人間は、
特別な立場にいるわけではありません。
迷ったまま一日を終え、
決めないまま次の日を迎えた人間です。
ここに書かれていることの多くは、
その途中で考えていたことです。
理由を聞かれると、
少しだけ間が空きます。
強い動機があったわけでも、
何かを伝えたい使命があったわけでもありません。
ただ、
決めなかったことが、
頭の中から消えなかった。
残ってしまったから、
書いています。
この場所に、
はっきりした答えはありません。
ここにある文章の多くは、
いまも途中です。
結論も、救いも、
分かりやすい終わり方もない。
ただ、
「その時、確かに立ち止まっていた」
という感覚だけが残っています。
何もしなくていい。
前に進まなくても、
決断しなくても、
答えを出さなくてもいい。
ここに来て、
少し立ち止まったなら、
それで十分です。
立ち止まることは、
一時停止ではありません。
ここにあるのは、
迷いの記録です。
判断できないまま大人になった人間が、
確かにここにいます。
残り一手は、
まだ盤上にあります。

